モデルケース紹介
栃木県内屈指の強豪校である真岡高等学校サッカー部。
今回、川上栄二教諭・監督の「ただのスポーツ合宿ではなく、学びの要素を入れたい」という思いから、相馬市で3泊4日の合宿×震災学習(ホープツーリズム)を実施しました。
●ホープツーリズムとは
東日本大震災・原発事故の復興に正面から向き合う「人」との出会いや「福島のありのままの姿」を実際に見て、聞いて、学んで、そして希望を感じてもらうツアーです。福島県では、震災学習を総称してホープツーリズムとしています。
行 程
令和2年8月4日~7日(3泊4日)
1日目 震災語り部・視察
2日目 トレーニング合宿
3日目 トレーニング(午前)・班別視察(午後)
4日目 地元高校との練習試合
震災学習-ホープツーリズム–
1日目(全体学習)バス3台にガイドが同乗しご案内しました
・震災語り部
・南の入公営住宅/尾浜こども公園
・メガソーラー
スポーツアリーナそうま第2体育館
震災前後の映像や津波の映像を含む相馬市のDVDを鑑賞。
その後、家族を亡くし自身も津波に飲み込まれた体験をした五十嵐さんのお話を聞き、今ある命について考えます。
震災語り部 3,000円/1団体(30名まで)
所要時間・・・20分~60分
震災後建てられた防災備蓄倉庫(相馬兵糧蔵)を視察。隣には、当時亡くなった消防団の方々の慰霊碑もあります。
実際の備蓄されている物資を見学しながら、災害時相互応援協定を結んだ地方自治体についてや、災害にどう備えているかなどを学びました。
所要時間・・・30分~
津波により失われた震災前の「原風景」を後世に伝え、遺族の心のよりどころとなるために造られた「伝承鎮魂祈念館」。
慰霊碑や、当時の状況を伝える写真等を見学し、当時の津波の被害について学びます。
2018年7月、8年ぶりに海開きが再開された「原釜尾浜海水浴場」に立ち寄ります。
開設中のため、大勢の海水浴客でにぎわう様子が見られました。
所要時間・・・~40分程度
3日目(班別学習)
5班分かれ、班別で学習を行いました。
・合同会社飯豊ファーム
・合同会社レナトス相馬ソーラーパーク(磯部地区メガソーラー)
・相馬市役所
・復興レストラン報徳庵
・福島県水産資源研究所
津波で被害にあった農業法人「飯豊ファーム」を訪問。
被災後、東京農大の学生とともに農地を復旧・復興し、「純国産大豆プロジェクト」へ参加。個人経営から農業法人を設立した過程や復興までの道のりを、実際に飯豊ファーム代表から伺います。農機具の乗車体験も行いました。
受入人数・・・20~30人程度
所要時間・・・30分~120分
津波で大きな被害に遭い、災害危険区域に指定された磯部地区に建てられたメガソーラーパネルを視察。
新しいエネルギー施設を建設するまでの過程と、これからのエネルギーについて学びました。
受入人数・・・20~30人程度
所要時間・・・~120分
震災当時、同じく高校生だった市職員に当時の話を伺います。
震災時、高校生が担った避難所の運営や当時感じた生の声を聴き、「自分だったらどうするか?」という視点をもとにワークショップを行いました。
受入人数・・・20~30人程度
所要時間・・・~120分
震災の翌年、復興の拠点として開業した「報徳庵」。
震災後、ボランティアの為に相馬市へ移住し、「報徳庵」を立ち上げた方のお話を伺い、放射能に対する正しい知識を学びます。
料金・・・昼食つき:1団体3,000円+食事代 / 昼食なし: 1団体5,000円
受入人数・・・20~30人程度
所要時間・・・~120分
沿岸漁業の復興の拠点として新設された「水産資源研究所」。
東日本大震災で全壊した水産種苗の生産・供給、魚介類の種苗生産技術の開発・改良及び資源管理に関する取り組みや、福島県の水産資源に対する風評被害払拭へ取り組むお話を聞き、施設の見学を行いました。
受入人数・・・20~30人程度
所要時間・・・~120分
宿泊施設
宿泊は、合宿団体の受入をしている松川浦旅館を利用しました。
料理が自慢の宿で、地元で獲れた海の幸をおなか一杯いただきます。
トレーニング合宿
相馬光陽サッカー場は、スプリンクラー設備を有した天然芝コート3面、人工芝コート2面(FIFAツースター公認・JFA公認)、練習用コート1面を備えており、年間を通して良好なピッチでサッカーができます。
今回は人工芝コート2面を貸し切り、最終日には地元相馬高校とのトレーニングマッチを行いました。
合宿×震災学習を体験して
「初めての合宿だったが、練習のときも、グループ視察のときも学年関係なく、団結力があると思った。震災当時、自分は幼稚園児で、すごく大きな揺れが長く続いたことを今でも覚えている。ただ、津波被害のニュースを見ていたが、正直現実で起きたこととして実感がわかなかった。今回、五十嵐さんの話を聞いて、事実が衝撃的で言葉も出なかったし、当時の状況を想像するととても悲しくなった。これからも僕たちは自然災害とともに生きていかなければならない。またこのような大きな地震がきたら、まず『自分の命は自分で守りたい』と思った。」
(1年 男子)
「合宿中、学年問わずコミュニケーションがとれ、比較的仲がよいことを改めて感じた。その反面、プレー中は仲間同士ということで強く言えず、刺激し合えないという課題もあった。コートに入ったら、自分にも仲間にも厳しく、メリハリをつけることが大事だと思った。そして全体を通して、多くの人に支えられていることを感じ、それは当たり前ではないことに気付かされた。すべてのことに感謝の気持ちを持って行動しなくてはいけないと思った。相馬市の皆さんは、新型コロナウィルスの感染拡大で不安な状況にも関わらず、温かく迎えていただき、人として見習うべきだと思った。これからは自分を律し、もっと周りに配慮して行動しなくてはいけないと感じた。」
(3年 男子)
「合宿中の研修や視察等の体験は、本校サッカー部のコンセプトの一つになっているため、今回相馬市で合宿と視察を実施しました。皆さんの相馬を愛している姿勢と情熱が伝わり、生徒達もよく話を聞いていたと思います。今回参加した生徒達は、当時幼稚園の年長から小学2年生で、震災が大変だったことはおぼろげながら知っていたようですが、生の話を聞き、実際に現場や記録を見ながら学びを深めてくれたものと思います。コロナ禍において、柔軟かつ寛容に対応していただき、こちらも心配しすぎない対応ができました。また機会があったら利用させていただければと思います。」
(川上栄二教諭・サッカー部監督)